あなたがストレージ機器を選定・導入する場合、何を念頭に考えますか?
ここでは、ストレージ導入の勘所について、考えてみたいと思います。
まず、ストレージの導入を任された担当者は、以下の点について考えておられると思います。
- 要件への適合性
機器の性能や機能が使用用途にマッチしているかどうか? - コスト
機器を導入することにより享受できる恩恵が、コストに見合うかどうか? - 将来性/拡張性
エスカレートするユーザニーズ(性能や機能)に対応できるかどうか?
要件への適合性
要件定義は専門家でも難しいケースがあります。とりわけ、用途が多様化するストレージ、共有ストレージについては尚更です。
要件を大別すると以下の通りとなると思います。
要件項目 | 説明 |
---|---|
容量 | 一番、定義し易いもののひとつです。 ただし、将来、データがどれだけ増えるのかは、簡単には見極めることは難しいです。 テクノロジーが進歩すると、1ファイルの大きさや、置かれるファイルの数が増加します。それも、急激に。 使用するユーザ数も増えます。それも、急激に。 これらにどこまで備えて考えておくのかが重要なポイントとなってきます。 定義が不十分だと、将来、拡張/増設といった追加投資が必要となってきてしまいます。 定義に将来的な不安を感じる場合、『拡張可能か否か』は忘れずに事前確認しておいた方が良いでしょう。 また、その拡張がオンラインでできるのか、オフラインでやらないとだめなのか、その際に再起動が必要なのか、必要じゃないのか、確認しておいた方が良いでしょう。 実際に運用し始めると、なかなか停止しにくくなってしまいます。 |
速度性能 | 定義し難い要件です。特に共有ストレージの場合は 尚更 です。 実際のアクセスを想定して、それに対して必要なデータ I/O 速度を定義することになります。 タスク1つのみがアクセスするケースであれば、定義し、事前評価などで確認可能な場合があります。しかし、実際の業務/ユースケースにおいては、定義/事前評価が難しいのが現実です。 実際に複数のタスクが並走するケースをモデリングし、それをもって事前評価する以外にありません。 製品を並べて比較する際に、ここで定義した I/O モデルで評価するのは勿論のこと、その3~4倍の負荷(=高負荷)で評価して使い物になれば、合格点であると考えた方が良さそうです。 性能を余分に備えてより高負荷に備えようとする訳ですが、現実には備えるにも限界があります。 この要件項目に関しても、将来的に拡張可能である構成を考えておく必要があるかもしれません。 速度性能の拡張に関しては、ユーザアクセスの他にバックアップ、RAIDの再構成、システム停止、分散などが伴うことも考慮しておいた方が良さそうです。 また、データが流れるパス(ネットワーク)についても、その高速性、通信許容量、コストを考えておいた方が良いでしょう。いくら、高速なストレージを導入しても接続するネットワークが遅ければ、その性能を引き出すことはできないからです。ネットワークの更新は、コスト高なため、注意が必要です。 |
機能 | 導入前に、将来的にある機能が必要となることが予定されている場合、それを予め備えているストレージを勘案しても良いと思います。しかし、それに重きを置いて選択肢を極端に狭めてしまったり、大幅にコストが上がってしまっては勿体ないと思います。 現状で必要と思われる機能のみに限定し、将来的なものに関しては、必要となった時に他の機器/クライアントとの組み合わせなどで対応することを念頭に考えても良いと思います。 |
その他 | 拡張時や特別な機能(バックアップやRAID再構成)を実施しているとき、通常のアクセスのパフォーマンスは必ず落ちます。これは、もはや常識であるので、必ず、勘案し、踏まえることが肝心です。 |
コスト
ところで、「安物買いの銭失い」という言葉に聞き覚えはないでしょうか? これは、昔から格言として使われてきた言葉です。安いものを買い求めたが有効使用できず、逆に高くついてしまった事を意味表します。
2倍の費用がかかっても、2倍以上の期間を機能動作するシステムであれば、年間のコストは同じになります。小学生でもできる算式ですので、誰でも理解できると思います。
無論、初期費用と連続運用期間だけが「コストパフォーマンス」を決めるパラメータではありません。
その他、運用効率・費用、想定される拡張費用、保守費用も考慮しておいた方が良いでしょう。
簡単には、以下のように考えることができると思います。
a. 総費用 = ①初期費用+(②運用費用(年間)+③保守費用(年間)) x ④運用年数+⑤拡張費用+⑥運用停止期間の損失
b. 年間費用 = a.総費用/④運用年数
c. 性能評価 (基準とするストレージに対する性能評価)(*1)
(*1) 基準となるストレージが単位時間に処理(I/O)できる量を 1 とした場合、同じ単位時間で処理できる量を “性能評価” としています。
例: 基準ストレージが特定のバッチ処理を1時間で処理する時、SolidPOWER7000 は30分で同じ処理を終えたとします。
この場合は、SolidPOWER7000 の処理できる量は2となります。
ちなみに、同じ価格帯のストレージAを基準(=1.0)としたとき、SolidPOWER7000 の性能評価は 2.5 あるとクライアントに評価されています。
SolidPOWER7000 の基準性能あたりの年間運用費用は以下の表の通りとなります。
コスト | ストレージA | SolidPOWER7000など |
---|---|---|
①初期費用 | 7,000,000円 | 7,000,000円 |
②運用費用(年間)(*1) | 840,000円 | 840,000円 |
③保守費用(年間) | 140,000円 | 245,000円 |
④運用年数 | 5年 | 8年 |
⑤拡張費用(*2) | 0円 | 0円 |
⑥運用停止期間の損失(*3) | 0円 | 0円 |
a.総費用 | 11,900,000円 | 15,680,000円 |
b.費用(年間) | 2,380,000円 | 1,960,000円 |
c.性能評価 | 1.0 | 2.5(*4) |
基準性能あたりの費用(年間) | 2,380,000円 | 784,000円 |
(*1) 運用のために作業する社内人員の人件費 (*2) 拡張計画なし (*3) 停止は定期法令電源設備点検時のみ
(*4) 同じ価格帯のストレージAを基準(=1.0)としたとき、SolidPOWER7000 の性能評価は 約 2.5 あるとクライアントに評価されています。
上記で SolidPOWER7000 の『基準性能あたりの費用(年間)』が基準ストレージA の約3分の1となりました。
これは、SolidPOWER7000 がより長い期間、より性能良く稼働できるためです。
また、上記の表に付け加える項目があるとすれば、それはリプレースコストです。運用制限、停止調整、データ移行等にかかる工数とユーザ使用に対する影響(コスト)です。ユーザ数が多く、ユースケースが多いシステムほど、リプレースは厄介なものになります。(リプレースコスト 大)
安定的に要件をみたす機器を、長期間にわたり継続的に使い続けるのが、一番、コストパフォーマンスがよいのかもしれません。
結論
上記に説明したとおり、要件定義を明確にし、それを勘案した際の範囲を事前に明示することをお勧めします。
どれだけ事前に勘案したところで、実際の運用に入ると想定していないアクセスが生じることも、よくある話です。そこで、そのストレージの最大使用状況を定義し、それに対する事前評価も重要です。実施する時間があるのであれば、是非、事前評価を実施していただきたいと考えます。
さらに、容量・速度性能により余裕のあるシステムを導入することを強くお勧めします。
容量や性能に対する要求は、突然、湧き上がってきます。この要求を満たせず、ユーザがフラストレーションを抱えたまま使用する状況が続くと、ストレージ選定・運用管理者としてのあなたの評価は悪くなる一方です。気をつけてください。
製造ラインに乗って生産される製品については、カスタマイズが難しく、特定の要件にマッチしない場合が多いものです。また、容量・速度性能を十分に備えて設計されているものはほとんどありません。その時点での一般的な要求を満たすように設計されているとは思いますが…
弊社のストレージ製品は BTO 製品で、柔軟に性能・容量・構成を設計し、お客様のニーズに寄り添うことが可能です。最小構成でも、性能的に余裕のある構成としています。
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